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キャリア形成支援



 キャリア形成の支援を行うと、自己実現ができES(職員満足度)が向上します。さらに、医療レベルが向上しCS(顧客満足度)も向上します。写真は当院の大正時代の教育風景です。当時の文献によると、「診療は朝の9時から夜の9時まで。診療の合間を縫って若い先生が看護婦たちに座敷で医学を教えていた。」とあります。この頃から教育に力を入れる伝統があったことは嬉しい限りです。
 当院では、人は「財」であるという視点からキャリア形成の支援に2つの柱を据えています。現認教育の充実と、目標管理による能力開発です。

 
 【写真】当院の大正時代の教育風景


 1.現任教育の充実

 現任教育の充実、つまり専門職として勤務する上で必要な知識と技術を、プログラムに沿って教育指導することは大変重要な事です。

 【クリニカルラダー】

 従来は「卒後5年目研修」等、経年別教育を行っていました。しかし、個々の技量に合わせ教育するクリニカルラダーへ変更しました。ラダーとは「はしご」の意味です。新人、レベルⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、主任・課長、とレベルが分けられており、一段ずつ上のレベルへ登って行きます。この制度により自身の成長と到達目標が見え、キャリア形成のビジョンが持てます。1つのテーマでもレベル別の研修会を数回開かないといけないので、院内の教育委員会は大変です。しかし、教育を行うためには自らのスキルアップが必要とされるので、必然的に委員会メンバーも教育を通して育っています。又、メンバーは「皆が育っていく姿を見るのはとても楽しみだ。」と逆に喜びを感じ、モチベーションが上がっているようです。

 【プリセプターシップ】

 新人職員に1人の先輩(プリセプター)がつくプリセプターシップも行っています。プリセプターは新人の技術面と精神面の両方のフォローを行い、さらに各部署内のプリセプター会議で情報を共有します。この会議をすることにより新人が目標を達成するための軌道修正ができますし、不安や悩みに早期に気付き対処ができます。また、プリセプターの指導力の向上のため指導を受ける新人によるプリセプターの評価も行います。こうして1年間互いに成長を重ね、新人研修終了式を「めぶき」と名付けて年1回行います。プリセプターは手作りの修了証を渡し、努力をねぎらい、新人は感謝の念を表し、涙、涙の感動的な会です。

 【社外研修受講の積極的支援】(昨年度258回 延べ390名)

 自己啓発や資格取得のための社外研修の受講を奨励しています。(当日は勤務扱い、出張扱い、受講料・旅費支給)自己の希望にも応えています。

 【社外での研究発表の奨励】(昨年度70回 延べ97人)

 学習や研究の成果を発表し自己の成長を実感できる場として、院外での学会で発表したり、勉強会で講師を務める機会を数多く提供しています。

 【社内教育の充実】(昨年度230回)

 教育委員会や看護部教育委員会が中心となって計画しています。業務通達や社内報で情報提示しています。

 【芳野病院学会】

 毎年秋に院内の教育委員会が中心となって運営する、「芳野病院学会」を開催しています。各自、自分で決めたテーマで数題の発表があります。自分の深めたい領域を勉強でき、それを成果として発表し個人のモチベーションは高まります。この発表が外部での発表の良い訓練となっています。昨年全日本病院学会が福岡市であり、なんと14題もの研究発表を行いました。芳野病院学会で鍛えられた成果だと思います。


 2.目標管理制度による能力開発

 教育だけでなく、しっかりとした目標管理を行わないと人は育たず満足も得られません。

 【病院目標を個人目標へリンク】

 病院理念に基づき毎年、年度前に年間目標が発表されます。これを全19部署でSWOT分析し現状を把握します。SWOTとは、病院の強み(Strength)、弱み(Weakness)、外部環境の機会(Opportunity)、脅威(Threat)のことです。SWOTクロス分析から課題を抽出し戦略マップを作成し、バランスドスコアカード(BSC)を作ります。管理職を対象に院内で研修会を開き、看護部で先行後、数年かけて全部署でできるようになりました。このような分析を行うことにより組織全体の経営戦略から導かれる部署のあるべき姿と、現状とのギャップを認識できます。BSCでは、①学習と成長(質の向上、人材育成)の視点、②業務プロセス(業務改善)の視点、③顧客(患者、利用者、家族、職員)の視点、④財務の視点の4点から目標が立てられます。そして、①成果目標、②成果指標、③現状値、④目標値、⑤アクションプランが計画されます。

 【目標設定キックオフ大会】

 年度開始前に全部署長が一堂に会し、お互いのBSCを持ち寄り年間目標の発表会が行われます。各部署毎に発表し、他の様々な部署から意見が出されます。かなり厳しい意見も出され、後日修正されます。この会は朝9時から夕方5時まで行われ疲労困憊しますが、組織のベクトルを合わせる為のとても有意義な大会です。

 【キャリアファイル】

 当院の自慢は、職員全員が「キャリアファイル」を所持して常に活用している事です。キャリアファイルは、キャリアシートⅠ、Ⅱ、個人目標シートからなります。キャリアシートⅠは入職時の年齢、当院における異動、社内の委員会活動、学会発表、投稿、資格取得が1ページに記載され、一目で入職後の様子がわかります。キャリアシートⅡは研修受講記録で、受けた研修のテーマ、主催をすべて記録していきます。又、重要な研修のレポートも保存します。
 次に個人目標シートですが、部署目標から落とし込んだ個人の目標、行動計画、実施計画を詳しく記載します。病院目標からきた部署目標まで決まっていても、それをこのように個人の目標に落とし込む作業がないと、何の為の病院目標かわからなくなります。とても重要な作業です。

 【上司と共に相談しながら上を目指して個人目標を見直す】

 キャリアファイルの個人目標シートは、さらに実施計画に対し達成状況を書く欄があり、年2回の上司の個人面談によるチェックが有ります。当院はクリニカルラダー制があり、1つ上の段階のクラスを具体的に思い描くことができます。その達成状況を上司と一緒になって考え、修正することができます。上司も年2回の面談の時に各々コメントを書きます。PDCAサイクルによる継続的な評価修正が行われます。

 【自己考課表による公正な評価】

 当院では年2回自己考課表を上司に提出し、個人面談を行います。さらに同じ項目で上司が評価し、ギャップのある項目についてはとことん話し合い、実際の力を認識してもらいます。この評価は賞与に反映されます。もちろん上司の訓練も必要なので評価者のトレーニングも行いました。

 【副主任立候補制度と付属施設長の社内公募制度】

 当院では副主任は立候補制となっており、やってみたい人は手を挙げます。もちろんすべての人が誰でもなれるのではなく上司の意見も聞きます。そして2年間やってみて、続けられそうな人は続けたり、昇格の道もありますが、無理と判断された人はもとの無役に戻ります。
 又、隣接する住宅型有料老人ホーム「うみかぜ」やグループホーム「わかくさ」の施設長も社内公募です。うみかぜは当時の病棟の主任看護師が、わかくさは副主任の看護師が手を挙げました。そして施設長に就任して人事から財務まで管理し、経営を学んできます。しかもこれは片道切符ではなく、うみかぜの施設長は昨年秋、病棟の主任看護師として戻ってきて、当時科長職だった理学療法士と交代しました。こうして学んだ経営的手法が病棟で生かされ、病院にとっても良いことですし、本人にとってもモチベーションが高まります。


 まとめ

 当院のキャリア形成の支援について述べてきました。現任教育の充実、つまり専門職として勤務する上で必要な知識と技術を、プログラムに沿って教育指導することは大変重要な事です。しかし教育だけ行ってもしっかりとした目標管理を行わないと効果は出ず、人は育たず満足も得られません。
 昨今、私たち医療業界は人材を採用するのが本当に難しくなっています。まずはキャリア開発の支援等でESを向上させ、人材の確保・定着をすすめ、医療の質の向上に努めたいものです。そうすることにより初めてCSが向上し、患者さんから選ばれ経営が安定化します。すると勤務環境改善に向けた投資もでき、ESが向上します。この一連のサイクルを1日も早く確立したいものです。

(福岡県私設病院協会ニュース 平成27年3月号に掲載)

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